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特集インタビュー

2021.11.22

#インタビュー

環境にやさしい「石けん系消火剤」を世界に広げたい。
森林火災、泥炭火災対策を東南アジアで展開する、
シャボン玉石けん株式会社。

シャボン玉石けん株式会社
取締役 研究開発本部長 兼 品質本部長 川原 貴佳様

シャボン玉石けんについて簡単な会社概要を教えて下さい

1910年に雑貨商として創業し、「健康な体ときれいな水を守る」を企業理念に、今年で創業111周年を迎えることができました。今となっては無添加石けんのイメージが強い弊社ですが、元々は合成洗剤などを主に取り扱っていました。1970年代より無添加石けんの開発を行い、そこから合成洗剤の取り扱いを止め、香料、着色料、殺菌剤などを含まない無添加石けんを主力に事業を行っています。その他にも歯磨き粉やシャンプーなど幅広い商品を取り扱っています。

産学官連携による石けん系消火剤の開発について教えて下さい

石けん系消火剤を開発するきっかけとなったのは1995年に起きた阪神淡路大震災です。ライフラインの断絶によって消火活動がほとんどできず、当時災害支援に派遣された北九州市消防局は強い無力感を覚えたとの話を伺いました。そのときに、水をあまり使わない消火剤の開発の話が持ち上がり、市より弊社に相談がきました。何度も試作品を作り実証実験を行いましたが思うような消火効果が得られず、より専門的・学術的な視点で開発を進めるため、北九州市消防局、北九州市立大学、弊社らの三者で産学官連携の形を取り本格的に石けん系消火剤の開発がスタートしました。

国内だけでなく海外でも石けん系消火剤を使用していると聞きました。海外での事業展開について教えて下さい

森林火災用に環境に負荷をかけない石けん系消火剤は2007年に商品化し、アメリカ、ヨーロッパ等の展示会や学会に出展しPRを重ねてきました。大きな転機となったのは2011年に南アフリカで開催された森林火災国際会議(Wild Fire 2011)です。出展ブースにインドネシアの大学の先生が来られ、「泥炭火災の消火に石けん系消火剤を使えないか」との相談を受け、現地を訪れることになります。毎年現地に伺い、泥炭火災(※1)の実情、土壌や周辺環境の調査などを続けていく中で実用化できるという実感を得ることができ、インドネシアでの泡消火剤事業がスタートします。

※1 泥炭とは、枯れた植物などが湿地などの水中で未分解で蓄積したもの。農地開発などによって泥炭が乾燥し、非常に燃えやすい。泥炭火災は地中までの完全な鎮火が難しく、問題となっている。

海外事業の今後の展望について教えて下さい

実用化が進んでいるインドネシアで着実に成功事例を作り、徐々に世界に広げていければと考えています。具体的には東南アジアでもタイ、マレーシアなど事業を展開していく予定です。

どのような経緯で現在の業務(海外事業)を担当されるようになりましたか?

2007年にシャボン玉石けんに入社し、当時は社の主力商品である液体せっけんや固形せっけんの研究開発を担当していました。研究部門の管理者を経て、そこから石けん系消火剤に関わるようになり、現在では、本格的に石けん系消火剤の研究開発、基礎研究や海外での事業展開などを担当しています。開発当時から、環境にやさしい石けん系消火剤は森林火災に使用することを視野に入れていたこともあり、森林・泥炭地火災が問題となっているインドネシアの事業を担当することになりました。

現在の業務について教えて下さい

現在、新型コロナウイルス感染拡大により以前のように自由に海外に行くことができなくなりましたが、特に繋がりのあるインドネシア現地とはリモートでの打ち合わせ等を行っています。2011年よりほぼ毎月現地に伺っていましたので信頼関係ができており、リモートでも特に問題なく情報共有ができています。

現地で苦労したことを教えて下さい

ありきたりな話かもしれませんが、仕事の面では現地の方との意思疎通が一番苦労しました。打ち合わせの内容で合意したつもりでもあちら側はそうではない、聞いていないなども頻繁に起きます。実験最中は、現地の先生はもちろんのこと、技術スタッフもほとんど英語を話せるので問題はないのですが、そうでない打ち合わせで細かな意思疎通を図るのは大変でした。実験や調査で、朝6時から12時間、野外で活動し、それを4日から5日繰り返すこともあり、体力的にきつかったです。インドネシアの独特な気候も影響しているかもしれません。現地の方にプレゼンをするとき「環境にやさしいならその洗浄剤を飲んでみろ!」と面白半分に煽られた経験もあります。でも、こういったことを繰り返しながら信頼関係ができていくんですよね。

生活面に関しては、水や食べ物が合わなくて体調を崩したり、宿泊先の環境で苦労したりなどはしています。朝、トイレから出られなかったこともありました。いわゆる日本人が普通に宿泊するようなホテルがほとんどなくて、シャワーをひねったら茶色い水が出てくることも普通です。その水で体を洗うのにも慣れましたね。そういった宿泊先も数年後に行くと、きれいな水が出るようになっているなど変化も楽しんでいます。

仕事のやりがい・面白さ・ユニークさについて教えて下さい

海外の事業展開としては、まだ成功と言える段階とは言えないのですが、活動を行っていく中で、学術論文を発表した際に反響があったり、現地のメディアに弊社の事業を取り上げてもらったりしたときはやりがいを感じます。自分が関わっていることが徐々にではあっても現地で広がっているんだなという実感が持てます。

現地の方との信頼関係ができていく瞬間も楽しみの一つです。弊社の、人にも環境にもやさしい石けん系消火剤をプレゼンテーションする際に、安全性を保証するためにあるパフォーマンスを行ったのですが、それが功を奏し、スタンディングオベーションのような状況になり大盛りあがりになったこともあります。

海外に行って、現地の文化に触れるのは楽しいですね。インドネシアは料理も美味しいですし、その地の文化に触れられることも興味深くて好きです。

現地の方々の反応について教えて下さい

現地の方も好意的な目で見てくれる方が多いです。インドネシアでも環境意識が高まっているので、火災にも効果的でかつ自然にもやさしいという点で反応がいいという印象があります。日本製であるということも大きな強みです。東南アジアでは「MADE IN JAPAN」に対するブランドイメージが高く、品質が良いものと認識を持っていただけるので助かります。

森林火災、泥炭火災が主な対象になるので、現地の農園を持っている自治体や自治体から災害対策を委託されている民間企業などからも反響が出ています。民間企業も独自の消火法は所有していますが、新しい選択肢として弊社の石けん系消火剤に興味を持ち、導入する企業も増えてきています。

今後やりたいこと、夢、目標などを教えて下さい

石けん系消火剤を世界に広げたいという大きな夢があります。世界各地で発生する森林火災や泥炭火災は、地球温暖化の大きな原因にもなっています。石けん系消火剤が広がることで、環境に負荷をかけることなく、世界規模で問題になっている地球温暖化に一石を投じることができるのではないかと考えています。

シャボン玉石けん株式会社とアジアカーボンニュートラルセンター(環境国際戦略課)

弊社も日本の一企業です。やはり、国相手、海外の自治体相手になると、全く相手にされないこともあります。特に消火剤案件になると政治が関わる部分も大きくなります。それが、アジアカーボンニュートラルセンターに入っていただくことにより国と自治体、自治体と自治体といった関係性になるため導入がスムーズになります。海外で事業をしていくに当たって非常に心強いパートナーとなってくれていますね。また、インドネシア以外の海外企業からの問い合わせをつないでもらったり、様々な相談に乗ってくれたりと非常に助かっていますので、今後も変らずのサポートをいただけることを期待しています。

1つの技術・製品だけで海外に売り込みをするということはなかなか難しいこともあるため、複数の技術やノウハウを1つの北九州モデルとして確立し、パッケージとして売り込むようなことが可能になれば、地元企業も海外へよりチャレンジできるのかなと感じています。

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株式会社シャボン玉石けん

住所:〒808-0195 福岡県北九州市若松区南二島二丁目23番1号
創立:1949年
事業内容:化粧石鹸、シャンプー、リンス、ボディソープ、粉石鹸、液体石鹸、クレンザー、台所用石鹸、漂白剤、石鹸歯磨き粉の製造
URL:https://www.shabon.com/

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