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特集インタビュー

2021.11.22

#インタビュー

インドネシアのゴミ問題をBEETLEブランドで解決。
西原商事ホールディングス。

株式会社西原商事ホールディングス 成田 詩歩様

西原商事ホールディングスについて簡単な会社概要を教えて下さい

廃棄物に関連する各種サービスを提供しています。グループ会社が3社あり、それぞれ収集運搬業、処分・リサイクル業、廃棄物管理業を事業としています。会社の成り立ちは古紙問屋として始まりましたが、その後に産業廃棄物収集運搬業、かんビンペットボトルのリサイクル、廃プラスチックの燃料化、そして医療廃棄物の焼却処理など、時代に合わせてサービスを広げてきました。北九州に6箇所、福岡市内に2箇所の工場を所有しています。その他には、自社開発の廃棄物一元管理システムを全国的に提供して、廃棄物の適正処理を支援しています。

地元の方々やお取引先には、BEETLE(ビートル)という愛称で親しんでいただいています。

海外事業について詳しく教えて下さい

2012年より本格的に海外事業を開始しました。JICAや環境省の補助事業を活用して、インドネシアのスラバヤ市に2箇所の工場を建設し、現地工場では、家庭系廃棄物の分別リサイクルと生ごみの堆肥化を行っています。現地工場稼働後は、従来埋立てられていた廃棄物の70%に及ぶ減量に成功しています。インドネシアにはゴミ山から使えるものを収集しそれを販売して生計を立てるスカベンジャーと呼ばれる人たちがおり、弊社ではそういった人々を雇い入れて教育を行っています。また、小学生から大学生、他地域の自治体や中央省庁の職員による工場見学にも対応しています。廃棄物問題の解決に限らず、低所得者層の人材育成や環境教育の推進を通じて、持続可能で地域に根ざす事業を構築しています。

社としての今後の展望についてお聞かせください

今後はまず、インドネシアに根ざし、都市型廃棄物処理のアジアモデルを構築していく方針です。家庭系廃棄物のリサイクルだけではなく、例えば医療廃棄物処理の適正化や、収集運搬処理のトレーサビリティ強化、資源化率向上のためのシステム構築など、現地のゴミ問題が解決に向かう支援ができるように事業を進めています。

まだまだ、国際ビジネスと呼べるには程遠い状況ではありますが、期待してくださっている現地の方々、またサポートしていただいている北九州市、アジアカーボンニュートラルセンターとも連携を図りながらビジネス化に向けて検討を重ねていく予定です。

西原商事に入社した経緯について教えて下さい

高校時代からアジアに興味があり、九州国際大学で国際関係学を学びました。第二言語でインドネシア語を選択したところ相性が良く、在学中インドネシアに一年留学。就職活動をする際にはインドネシアで新規に事業を立ち上げる企業を探し、当初はジャカルタに新工場を作るという話があった愛媛のタイヤ関連企業に内定が決まっていましたが、どうしても将来的に地元の北九州に帰りたいなという想いがありました。大学の就職支援センターでたまたまその話をしていたときに、地元北九州が本社の西原商事を知る方とのご縁に恵まれ、現社長との面接の機会をいただき、すぐに立候補して内定を頂いた形です。不思議なご縁だなあと感じています。

現在の業務について教えて下さい

最後に現地に行ったのが2020年の3月。日本ではじめての緊急事態宣言が発令される直前でした。スラバヤ市で新工場建設の為の予算が組まれて「さあはじめよう!」というタイミングでパンデミックが起こり、ついていた予算も白紙に戻りました。現在はオンラインなどで現地の方のフォローアップなどを行っています。

現地で苦労したことを教えて下さい

34名の現地従業員たちと心を通わせて『仕事仲間』になることは容易ではなかったなと思います。

インドネシアには様々なルーツを持つ民族がいて、その数は300を超えるとも言われています。また公用語はインドネシア語ですが、700を超える地方言語が存在するなど、日常的に異文化が共存している国です。

そういう国で、元スカベンジャーの方々と一緒に働き始めたわけですが、インドネシア語が通じない、文字の読み書きができない、始業時間に遅れる、休憩に行ってそのまま帰ってこない、無断欠勤するなどなど想像以上に高い壁がありました。しかし、彼らはそういう環境下で今まで働いてきていますので、心の底から悪気はありません。そうしますと話し合いを重ねて折り合いをつけるしか方法はありません。しかし最低限、西原商事のスタイルや理念を理解してもらって仕事を進めていく必要がありました。言語化しづらいニュアンスを私自身がうまく説明できない時もあり、苦労した点です。

時間をかけて日々信頼を積み重ねた従業員が次の日集団でストライキを起こすといったことも日常茶飯事で、新卒で単身現地入りした身としては、なかなかできない体験をさせてもらったように思います。

給料を月給制にすると発表した直後、半分以上の人が次の日から来なくなったこともあります。彼らの今までの生活では日雇い労働が基本だったため、おそらく混乱があったのだと思います。頑なにわたしたちのスタイルを貫くのではなく、現地の方と共感できる形を模索する毎日だったように思います。

仕事のやりがい・面白さ・ユニークさについて教えて下さい

異なる言語や文化の壁を乗り越えて、お互いが共感して誇れる事業をつくりあげていくことにやりがいを感じます。

たび重なる衝突はありながらも工場運営が安定してきた頃には、北九州から持ち込んだBEETLEブランドを、現地の方々が大切に扱ってくれるようになりました。例えば、こどもの参観日にBEETLEの制服を着ていく従業員の方もいらっしゃいました。『BEETLE – KITAKYUSHU – SURABAYA』と書いた制服を誇りに思うようになってくれていたのです。弊社で働くことで生活が少しでも改善されたり、仕事に誇りをもってくださったりするのを目にして嬉しかったです。

現地の方々の反応について教えて下さい

現地工場は小中学生の社会科見学や、大学生の研究場所として活用いただいたり、時には国際フォーラムの見学サイトに選ばれて環境大臣がお見えになったりと、年間2,000名を超える訪問者がありました。そして夕方には学校帰りの子どもたちが遊びに来るなど、多くの方が集ってくださる場所になりました。働く従業員が仕事に誇りを持つことで、自主的に工場を綺麗に整えることができます。そしてその綺麗な工場に、多くの人が関心をもって来てくれるという良い循環が生まれました。

今後やりたいこと、夢、目標などを教えて下さい

まずはインドネシアで都市型廃棄物処理のアジアモデルの構築に努めていきます。コロナウイルスによるパンデミック期間は海外事業の発展の面では非常に痛手でした。しかしこの期間を活用して、弊社は国内事業の充実化を図っています。今まさに北九州市内で新たな工場を2箇所整備しているところです。直接交流の再開後には沢山の方々に実際に目にして触れていただいた上で、現地に合うモデルをご提案していきたいと考えています。

ゴミ問題は世界共通の課題です。現地工場は日量10トンという実証規模でしたが、実はスラバヤ市のごみは日量1,600トンあります。また首都ジャカルタでは日量9,000トンに届こうかとしています。いずれも経済成長と共に年々増加傾向にあるにも関わらず、なかなか解決に至っていない状況です。インドネシアに限らず世界各国に同様の状況があり、そこには劣悪な環境下で働く人々がいます。環境首都・北九州市という恵まれた環境で培ったノウハウを、これからも幅広く提供できればと考えています。

西原商事ホールディングスとアジアカーボンニュートラルセンター(環境国際戦略課)

わたしたちは民間企業として、現地課題を解決するためのアイディアや技術力には自信があります。しかし単なる一企業として、海外の方の信頼を得ることは難しいと感じています。アジアカーボンニュートラルセンターと一緒に活動することで海外の政府、自治体、企業から見たときの信用がまるで変わってきます。また公害克服から環境未来都市への変貌の経験を語ることができる北九州市ならではの、現地との信頼関係の構築を幾度となく目にしてきました。ご支援いただき突破口を開いて頂く中で、民間企業として具体的な解決策で現地に貢献できるよう努めてまいります。

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株式会社西原商事ホールディングス

住所:〒807-0821 福岡県北九州市八幡西区陣原2丁目2-21
創立:1972年
事業内容:産業廃棄物の処理、収集運搬、回収
URL:https://www.nishihara-corp.jp/

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